【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第3章 金髪のボディーガード
安室さんみたいに、まだその人のことが好き。と言う顔はどうしたってできない。
「こんな可愛い子を振るなんて、もったいないことしますね」
安室さんはそう言いながら、わたしを見て微笑んだ。
さっき、わたしも安室さんに同じこと思ったよ?
声には出さなかったけど。
お互いが全く同じこと考えていたことに、わたしはドキッと心臓が跳ねた。
そして、少し嬉しいと思ってしまった。
「よし。出来た」
そう言って安室さんがテーブルに並べてくれたのは、鶏肉のトマトソテー。
「わ…美味しそう」
「残り物で作ったので、少し質素ですが」
「十分だよ!」
わたしが目を輝かせて言うと、安室さんは微笑みながらフォークを渡してきた。
「熱いうちに召し上がれ」
「いただきます!……ん…!おいしい…」
まるでレストランで食べるような味だ。
よく考えたら喫茶店でバイトをしてるから、当たり前なんだけど。
色々あってお腹すいていたからさらに美味しく感じた。
「なんだか、イメージと違いますね。
もっとクールな女の子だと思ってた」
「…よく言われる。
ピンクより、ブルーが好きそうとか、チョコレート味よりコーヒー味の方が好きそうとか。」
「違うんですね?」
「違うよ。
わたしだって、ピンクの衣装のほうがテンションあがるし、甘いもの大好きだし。
あまり食べられないけど…ただの23歳の女だもん」
「…ふ…」
「どうして笑うの?」
「いや?
…前にも似たようなことを別の人と話したことを思い出して。
…その子も、僕が思っている以上にずっと普通の女の子でした。」
「…それって、さっき言ってた彼女?」
「…まあ。」
「好きなんだね。今も」
「うん。」
そう言って安室さんは、またあの悲しそうな顔で笑った。
好きだって、とても幸せな言葉なはずなのに、そんな顔して言わなきゃいけないなんて。
安室さんの顔をじっと見ると、切ない笑顔が胸に沁みる。
そして見てみたくなった。
この人の笑顔の奥を…