【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第18章 Love song
わたしは安室さんの身体にぎゅっと抱きついて、彼の胸に顔を埋めた。
「…零」
彼の本名を呼ぶと、零はお鍋の火をカチンと止め、わたしを抱きしめ返してくれる。
「どうした?」
「ううん。好きすぎて…」
わたしは今まで、恋をして曲を書いて、その恋が終わったらまた曲を書いた。
そして、この曲は誰々と付き合っている時のことを書いた歌とプロモーションをして、
ずっと自分の芸能活動に恋愛を利用してきた。
いつの間にか、わたしの曲と恋愛はセットになっていて、それ以外の売り出し方を知らない。
だけど零とのこの恋だけは、そんな軽薄に扱いたく無い。
たしかに零とのことを書いた曲だけど、それをエサにして売り出したくない。
もともと今回リリースする曲も、今の恋を歌った曲だと言わずに出そうと思っていたし。
そんな思いで、わたしはジャケット撮影のことを言い出せなかった。
零のことを利用するのだけは嫌だったから。
「お腹すいてる?」
「すいてる!」
「じゃあ、手洗いうがいしてきて?
準備するから」
零は微笑みながらわたしの髪を撫で、頬にキスをした。
幸せ…だから、絶対無くしたく無い。
ジャケット撮影のことは、わたしからちゃんと断ろう。
そう思いながら、手洗いうがいをするために洗面所に向かった。