【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第17章 似てない家族 ☆
空港までの道のりは、わたしと安室さんがずっと話してて、お兄ちゃんはじーっと窓の外の景色を見てた。
窓の外を見ながら、何かじっと考え込んでいるようで、どうしたんだろう。そう思っていると時間が経つのは早いもので、いつの間にか空港に到着した。
「従業員用の出入り口がそこだから、もうここでいい」
そう言ってお兄ちゃんは車を降り、トランクとバッグを後ろから下ろした。
そして、バッグを肩に担ぐと、トランクの取っ手を持ってわたしの方を向いた。
「じゃあな。
たまには母さんに顔見せにロンドンに帰ってこいよ」
「わかったよー!お母さんによろしく言っといて」
「電話してやれ」
「はあい」
わたしが仕方なしに了解を言うと、お兄ちゃんはフッと優しく笑って頭をぽんぽんと撫でた。
昔から兄はこうしてわたしを可愛がってくれた気がする。
誰よりも。
くるっと背中を向けて、トランクを引いて空港の中に入ろうと足を踏み出したとき、兄はぴたりと止めてまたこちらを振り返った。
「リラ」
「なにー?」
いつものようにわたしの名前を呼ぶお兄ちゃん。
何気なく返事をするわたしに、兄が放った言葉は
「…好きだよ」
好きだと言われ、わたしは間髪入れずにこう返す。
「…?わたしも好きだよ?」
一瞬、お兄ちゃんは目を見開いてわたしを見た気がしたけど、次のわたしの言葉で少しだけ瞳が揺れた気がした。
「お兄ちゃんも、お母さんも、大好き!」
「…その好きじゃないんだがな」
「??」
「いや。なんでもない。
じゃあまたな。身体に気をつけて頑張れよ」
ふ…と、何だか少しだけ寂しそうに笑った兄は、くるっと背中を向けてロンドンへ帰るフライトのお仕事へ出かけて行った。