【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第17章 似てない家族 ☆
「もう、お兄ちゃん大人気なさすぎ」
「お前は彼のことを好きすぎだ」
呆れたように言う兄を、わたしは思わず見た。
そんなわたしに、兄はため息をついた後、続けて言う。
「お前の顔見てればわかる。
お前が彼をどれだけ好きか。
今までの男とは比べ物にならないぐらい。」
「…安室さんは、わたしにはもったいないぐらいいい人だよ。
だから、安心してってお母さんにも言っておいて」
「…まあ、また別れて失恋ソングを出さないよう祈ってるよ」
そう言って兄は、またわたしを子供扱いしてぽんぽんと髪を撫でた。
いつもそう。
まあ、兄の方がずいぶん年上だから、仕方ないと言えばそうなんだけど。
「なーに?お兄ちゃんだって、CA何人も食ってるってお母さん言ってたよ?
そろそろ本命絞ったら?」
若干嫌味も含めてそんなふうに笑うと、兄は東京の景色を見下ろしながら静かに言った。
「本命か…随分前に決まってるんだがな」
「え?だれ!?同じ会社のCA?」
初めて聞く兄の恋の話にわたしは思わず兄の顔を覗き込んだ。
よほどワクワクした顔をしていたんだと思う。
兄はわたしのおでこにピコッとデコピンをしながら意地悪に笑って言った。
「内緒」
「いったー!!」
デコピンが思った以上に痛くて、おでこを抑えて嘆いていると、兄は改まって真剣な顔してわたしを見た。
「…あの安室という男、お前のことちゃんとわかってるのか?」
「もちろん…」
「本当に全部?」
兄が言わんとしていることはわかった。
わたしは安室さんにひとつだけ隠してることがある。
「…わざわざ言う必要ないことは言わないでしょ、普通」
「まあ、ただ単に付き合ってるだけなら言う必要は無いな。
…だがお前が、数年先も彼と一緒にいたいのなら話すべきだと俺は思うよ。」
「…わざわざ、言わなくて良いこともあるよ」
わたしはそう言って頑なに首を縦に振らなかった。
わたしのこの頑固な性格をよく知ってる兄はそれ以上何も言わなかった。