【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第13章 ZERO
ヒロとのことを降谷さんに話した。
イギリスのハイドパークでたったひと月だけ過ごしたこと。
初めてキスをしたこと。
途中まで話し終えたとき、降谷さんは静かに口を開いた。
「…それで、その後は?」
「その後は…会えなくなった。」
ひと月経つころ、わたしは日本に戻ることになった。
帰国の前日、いつもの時間にハイドパークに行ったけど、ヒロは来なかった。
どうしてか、ここに来れば当たり前にヒロに会えると思っていたわたしは、連絡先の交換すらしていなかったことに気付くけど、もうどうしようもなくて…
あ…失恋したんだ。わたし…
そう自覚したのは、帰りの飛行機の中。
飛行機に乗るまで、どこかでヒロが会いに来てくれるんじゃないか。と謎の期待を持っていたけれど、離陸した瞬間、あぁ。もうヒロには会えないんだと実感した。
その瞬間、涙が溢れて止まらなくて、止まらなくて、初めての失恋から癒えるための方法すら知らなかった。
帰国してから、わたしはまた元のアイドルグループに戻り、活動を再開した。
だけどずっとヒロのことが忘れられなくて苦しくて、過ぎていく時間の中でひとり取り残された気がして、その思いを曲に書いた。
それが、ハルジオンという曲だった。
この曲を提出した時、事務所からグループから脱退してソロアーティストとして契約を結び直そうと許可が出た。
そして1年後、グループを卒業した。
卒業公演は伝説とまで言われて、今やそのDVDは入手困難と言われている。
そうしてわたしは、雨宮リラから、Lilaになった。