【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第13章 ZERO
安室side
カジノタワー横の建設ビルに到着した頃には、もうRX-7はスクラップ同然だった。
昔、警察学校で教官の車をボッコボコにしたことを思い出す。
そんなことも、あったな…
今このことを思い出すのは、これが失敗すれば僕は今日死ぬからだろうか。
死んだら、あいつらに会えるのか…?
これまで酒を飲むときに何度も考えたことが、フッと頭に浮かんだ。
そしてその次に浮かんだのは、リラの歌声だった。
初めて聴いたときの、stand by me
あぁ。あの声が聴けなくなるのは嫌だな。
それに、リラのチェリーブロッサムの香りを嗅げなくなるのも嫌だ。
リラの笑った顔を、見れなくなるのも絶対に嫌だ。
そんな風に思っていると、コナンくんがスマホを触りながら助手席で僕に尋ねた。
「前から聞きたかったんだけど…安室さんて彼女いるの?」
知らないのか?コナンくんは。
僕が誰と付き合っているのか。
それとも知っていて、カマをかけてきている?
この状況で!?
一瞬のうちに頭の中で色々なことを考えすぎてつい、いるよ。と答えそうになったが思い直した。
今はゼロの降谷零だ。
「僕の恋人は、この国さ」
前に、リラに聞かれたことがある。
今の仕事、好き?と
好きか嫌いかと言われるとそうではない。
リラと僕は違う。
そう思ったけれど、一緒だった。
自分の仕事に愛情と誇りと使命を持っていることが。
僕はエンジンを最大限にふかした。
「5!4!」
コナンくんのカウントが始まり、僕は深呼吸をする。
リラを守るため、この国を守るために必ず成功させる。
「3!2!」
そして、今日リラに全部を話そう。
胸を張って好きだと言えるように。
「1!」
ゼロ…