【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第13章 ZERO
安室side
「安室さんは、一体誰なの?」
そんな核心をつくような質問に、僕は正直なんて答えるべきかわからなかった。
降谷零だよ。
そう言おうとしたけれど、言えなかった。
せめて、もうすぐ開かれるサミットが無事に終わるまでは隠しておこうと思っていたから。
誤魔化すみたいにリラの髪を撫で、キスをするとリラは戸惑いながらも幸せそうに笑った。
その笑顔に、また僕の良心がチクチク痛む。
「降谷さん。」
今日はサミット会場の視察。
会場に到着して、点検を開始した僕を風見が迎えに来て僕の名前を呼んだ。
「どうだ?そっちは。変わった様子はあったか?」
「現時点では。
まぁ、流石に何か起こるとしてもサミット当日…
降谷さんの方は?」
「どうやら、ガス栓にネットが繋げられるようだ。
これを使った爆破テロが計画されている可能性はあるな。
念のため、公安の鑑識に連絡をしておくよ」
そう言い、鑑識へ電話をかけたその瞬間、目の前のサミット会場が大きな音を立てて爆発した。
ドオオォオオーン
「なっ!!」
爆風と瓦礫が外にも押し寄せてきて、僕と風見は腕で顔を覆いながら、身体を飛ばされないよう必死で地面に足をつけた。
「た、大変だ!」
中には、公安の仲間がまだ大勢いた。
風見が慌てて中に入ろうとしたのを、僕は咄嗟に止める。
「待て」
「降谷さん!」
「今中に入ったって、間に合わない。
…それより、このままじゃただの爆発事故として処理される。
それだけは避けたい」
風見の目をじっと見ながらそう言うと、風見は少し迷った後、僕の言うことに納得した。
「…わかりました。
手筈を、整えます」
「頼んだ」
それだけ言うと、僕はフラつく足取りで怪我をしたままサミット会場を後にした。