【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第13章 ZERO
「安室さんは一体誰なの?」
そう聞いた夜、安室さんは少しだけ微笑みながらわたしの髪を撫でて言った。
「僕は、僕だよ」
うまく、はぐらかされた気がした。
だけどそう言ってあの優しい笑顔で微笑まれると、もう何も言えなくて、ただ安室さんにしがみついて眠った。
安室さんは、安室さん。
そうだよね…
半分、自分自身に暗示をかけるみたいにそう思いながら、布団の中で悶々と考えていると、スマホにセットしていたアラームがけたたましく鳴った。
Pipipipipipi…
むくっと身体を起こし、隣を見ると安室さんはもう出かけていた。
昨日の今日だったから、わたしは慌ててベッドから出ると、ローテーブルに置いてある手紙を見つけた。
それを両手で手に取り、食い入るように中身を読んでみると
今日は朝から仕事なので先に出ます。
多分夜も遅くなるので、先に寝ていてください。
好きだよ、リラ
そう書かれていた。
安室さんの少し癖のある字で書かれた好きだよと言う文字に胸がときめく。
安室さんは、安室さん。
わたしの今一番大切な人だ。
隠し事してるなんて、きっとわたしの勘違いだ。
そう自分に言い聞かせ、わたしもランニングに行く準備を始めた。