【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第12章 諸伏景光の隣には
「夏休みは…今月いっぱいまで。
親は心配…してるけど、まあ放任主義だから大丈夫。
ここで練習したのは昨日が初めて。」
そう言いながら、わたしは思わずヒロを見た。
ヒロは、わたしの目をじっと見つめながら笑った。
「…昨日初めてで、今日も来たってことは、この場所が相当気に入ったんだな」
そんなこと言って、ヒロはきっと気付いてる。
わたしがどうして今日ここに来たのか。
言わせようとするなんて、ずるい人だ。
「…今日来たのは、会えるかなって思ったから。
…ヒロに」
言った後に、突然恥ずかしくなって顔がみるみるうちに熱くなっていく。
ヤバイ…
なんか、単純な女だと思われていたらどうしよう。
そんなことを焦りながら考えたけど、発した言葉を元に戻せるはずもなく、ただヒロの反応が来るのを恐る恐る待った。
すると、ヒロの手が伸びて来て、わたしの頭をぽんぽんと撫で、
「オレも。会えるかなって思ってた」
優しい声で、そう言った。
それって…ちょっと期待してもいいってこと…?
なんて返事をするのが正解なのかわからずにいると、ヒロはまたわたしの頭を撫でながら言った。
「また、君の歌が聴きたくて」
あ…歌か…
わたし自身に会いたかったわけじゃないんだ
あからさまにしゅんとするわたしを見て、ヒロはクスクスと笑った。
「嘘だよ。…いや、歌が聴きたいのは本当だけど。
リラと、話したいなって思ってた」
そんな殺し文句を、堂々と言ってのけるこの人に初めての恋をしたわたし。
その日から次の日も、また次の日も同じ時間同じ場所でヒロに会いに行った。