【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第12章 諸伏景光の隣には
次の日、昨日と同じ時間、同じ場所にギターケースを背負って足を運んだ。
もしかしたら、またヒロに会えるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きながら、気付くと小走りでハイドパークの池のほとりを目指した。
目的地が近づくに連れ、わたしの足は速くなる。
ドキドキしながら昨日と同じ場所に立ってみたけれど、彼はいなかった。
「なんだ…いないのか」
はぁ…とあからさまに残念なため息がわたしから飛び出す。
仕方ない。
せっかく来たし、ギターの練習でもして帰ろうか。
そう思いながらギターケースからギターを取り出してベンチに腰掛けたとき、
「リラ?」
わたしを呼ぶ声がした。
パッと振り向くと、ヒロがいた。
会えた…また、今日も。
自分でも呆れるほど顔が綻んでいるのを自覚してる。
そして、名前を呼ばれた瞬間わたしの心臓がトクンと跳ねたのも、ちゃんと自覚した。
また会えて嬉しくて仕方なくて、ヒロが一歩ずつ近づいてわたしの隣に座るのをドキドキしながら待ってた。
ヒロは隣に座った後、わたしの方を見ながら笑って言う。
「昨日歌ってた歌、聞かせて?」
そんな嬉しすぎるリクエストをくれるヒロ。
わたしはギターのピックを握り、ゆっくりと演奏を開始した。
昨日歌った時よりも、緊張する。
声が震えて、逆にビブラートに変わって、歌に深みが増した。
ヒロは隣で何も言わずに聴いてる。
時折、歌いながら目が合うと、少し微笑んでくれる。
こんな気持ちになるの、生まれて初めてだ。
この人のこと、もっと知りたい。
そう思った。