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【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】

第12章 諸伏景光の隣には




本当なら、夜に男性と2人きりになるこの状況、危ないんだろうけど、この人は何となく大丈夫な気がする。
そんな雰囲気を纏った人だ。


「…ロンドンへは、観光に?」


わたしがそう話しかけると、その人はふわりと笑いながら言う。


「仕事で。君は?現地の人?」

「わたしは…普段は日本にいるんだけど、今は夏休み」

「ははっ…今はもう秋だけど?」


そう言って、その人は優しく笑った。

不思議な雰囲気の人だ…
見た目はわたしよりも少し年上に見えた。


「…仕事が、思った以上に大変で。
1人でぼーっとしようとここに来たんだ」

「え…あ、じゃあうるさくして邪魔だったんじゃ…」

「ううん。その逆。
癒されたよ。ものすごく」


癒された…
わたしの歌が、誰かを癒すことができたの…?

自信を完全に無くしていたわたしにとって、その一言がとても胸に響いた。



その時、


ピリリリ


彼が胸ポケットに入れていた携帯が鳴った。


「ちょっとごめん。
…もしもし?ゼロ?」


彼は電話口の相手に「ゼロ」と呼びかけながら、何やら真剣に仕事の話をしている様子だ。

しばらく電話をした後、それを切るとベンチから立ち上がった。


「…行かないと」

「あ…じゃあ…」


その後に続く言葉を一瞬考えた。
サヨナラ…なのかな。
さよならだよね?
だってきっともう二度と会うことはないだろうし…


そう思っていると、彼はわたしの目をじっと見ながら言う。


「名前は?」

「雨宮リラです。
あなたは?」

「諸伏景光。景(ヒロ)ってよく呼ばれる」

「…ヒロ…」

「じゃあ、またね。」


ヒロはまた優しく笑うと、わたしの頭をぽんぽんと撫でた後、ゆっくりとその場から立ち去った。


去りゆく彼の後ろ姿を見ながら、胸がドクドクと鼓動していることに気づいた。


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