【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第2章 運命を信じる?
「こちらにどうぞ」
そう言って案内されたカウンター席に座ると、安室さんが目の前でコーヒーを淹れてくれた。
「コーヒーだけでいいですか?
お腹空いていたらサンドイッチやホットケーキなんかもありますよ?」
「あ…ごめんなさい。
わたし、極力糖質を摂らないようにしてて…
コーヒーもノンシュガーでミルクも結構です」
「そうですか。芸能人ですしね。」
そう言って安室さんは、カップにコーヒーを注いだ。
不意にコーヒーカップに添えられた安室さんの手を見る。
綺麗な手。
指が長くて、でも関節はすこし無骨で、爪が綺麗に切り揃えられていて。
「どうぞ。」
「いただきます」
そう言って目の前に出されたコーヒーに口をつけた。
ほろ苦くて、深みのある味。
なんとなく、安心する…
「美味しい…!」
「良かった」
そう言って安室さんはニコッと笑った。
さっき、笑顔の奥が見えない人だなと思ったけど、それは相変わらずだ。
だけど、ものすごく優しそうに笑う人なんだなと思った。
思わず、その笑顔に翻弄されそうになる。
「あ、そういえばミュージック大賞、観ましたよ。
おめでとうございます」
「ああ、ありがとうございます。」
「ものすごく綺麗な声で歌うんですね。」
「…そう…かな?」
そんなこと、面と向かって言われたの、実は初めてだ。
ファンと交流することはめったに無いし、歌が上手いとか、歌詞がいいとか、作品に対してそう言ってくれる人はたくさんいるけど、声が綺麗って言われたことなかったかも…
なんとなく安室さんにわたし自身を褒めてもらったみたいに思えて、嬉しかった。