【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第2章 運命を信じる?
その日の午後
「ここか…毛利探偵事務所」
タクシーを降りて直ぐ前にあった建物を見上げると、2階の窓ガラスに毛利探偵事務所と書いてある。
探偵ってどんなこと聞かれるんだろ…
ちゃんと犯人見つけてくれるのかな…
そう思いながら、2階へと続く階段を登ろうと踏み出した時、
「毛利先生なら、今不在ですよ」
「え…」
振り返ると、肌のトーンが少し暗い、金髪の男性と目が合った。
エプロンをして、箒とちりとりを持っている。
風が吹いて、わたしの髪が靡いた時、その彼も同じようにわたしを見て驚いたように目を見開いた。
「君は…」
あ、そうか。わたしのこと知ってるんだ。テレビか何かで
「…いつ、戻るかわかりますか?」
「あと1時間ほどで戻ると思いますよ。」
「じゃあ、前で待ってます」
にこ…と、得意のアイドルスマイルを繰り出したわたしを見て、その男性は同じようににこ…と微笑みながら言う。
「よければ、ポアロで待ちますか?
…あ、僕はここの喫茶店でバイトをしている、安室透と言います。」
「わたしは…」
そう言って名前を名乗ろうとしたとき、その安室という人が笑って言った。
「Lilaさんですよね?アーティストの」
笑顔の奥が、読めない人だな。
そう思った。
「知ってくれてるんですね。本名は、雨宮リラと言います。」
「ええ。こないだテレビ見ましたよ。
芸能人が探偵事務所の前でずっと待ちぼうけするのは良く無いでしょう?
コーヒーでも淹れますよ。」
たしかに。
万が一週刊誌に撮られたら、何のために事務所にも警察にも黙ってここに来たんだと言うことになるか…
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
そう言って彼の後をついて通された喫茶店は、カウンターとソファー席が3つある、こじんまりとした喫茶店だった。