【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第2章 運命を信じる?
コーヒーを飲みながら、安室さんがカウンターに立つのをじっと盗み見してた。
不思議な雰囲気の人だな。
今までわたしが付き合ってきた男の人とはどこか違って見えた。
どことなく、ヒロに共通する何かを感じる。
顔も、声も、仕草も、全然違うのに、何故か安室さんの背後にヒロが見えた。
どうしてだろう…
「この間、ラジオでstand by me 歌ってましたよね?」
「え…ああ。
そう言えばそんなこともあったかな…」
「ふ…忘れちゃいましたか?」
「もうずっとオフなんてなかったから、いつ何の仕事したか目まぐるしくて覚えてないの」
実際、今日の午後から明後日までのオフ。
連休は、実に半年ぶりだった。
「…あの歌、勇気を貰ったんです。
とても。
多分一生忘れないと思います」
じっと目を見られてそうストレートに言われると、わたしは顔がどんどん熱くなる。
「お…おおげさだね」
「大袈裟じゃありませんよ。
きっと日本全国、あなたの歌を聴いてそう思っている人はたくさんいると思いますよ」
そう言って安室さんはまた笑った。
優しい笑顔。
社交辞令だとわかっているけど、こんなふうに微笑みながらそんな事言われると、不覚にもドキッと胸が鳴った。
そして同時に思った。
このひとは、危険だ。
なぜかわからないけど、この人に深入りすると抜け出せなくなりそうな…
そんな気がした。
そんな風に思いながら、じっと安室さんの方を見ていると、カフェの前に停車したタクシーを見て安室さんが口を開く。
「あ。毛利先生、帰ってきたみたいですね」
そう言って、安室さんがポアロの外を見ると、タクシーからスーツを着た男性と、若い女の子、小学生ぐらいの男の子が出てきて、脇の階段を登って行った。
「あ、じゃあわたしはこれで。」
お金を置いて、早速毛利探偵事務所へ向かおうとしたとき、安室さんが言った。
「僕も行きますよ。」
「え?どうしてあなたが?」
「僕、こう見えて毛利探偵の助手なんです」
「助手…」
そう言われると、ダメです!とは言えず、
わたしは大人しく安室さんの後ろについて、毛利探偵事務所へ向かった。