【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第12章 諸伏景光の隣には
自室に戻ろうとリビングの中を通った時、ふとリビングの机の上を見ると、1枚の葉書が置いてある。
「メアリーおばさんから?」
「そう!まだ日本にいるんですって」
「メアリーおばさんって、お父さんのお姉さんでしょ?
どうしてお母さんとまだ仲良いのよ。
離婚したくせに」
「母親、自由奔放な旦那、仕事人間。
共通点が多いのよ。
わたしとメアリーさん。」
そんなもんなの…
大人になると、細かいことは気にならなくなるのかな。
そう思いながら、その葉書を手にとって見た。
葉書には海で撮影されたと思われる家族写真の下にこう書かれている。
「落ち着いたらイギリスにまた遊びに行くわ。
5年前の写真だけど、添付しておくわね」
写真には、メアリーおばさんとその息子さんと娘さんが写っている。
「…メアリーおばさんとこの一番上の息子さん、お兄ちゃんにそっくりだね」
写真の中の、わたしの兄に瓜二つの男性を見ながら母にぽつりとこぼす。
「ええ。秀一くんだったかしら?
今アメリカにいるみたいよ。
仕事ばかりしているとこの間メアリーさんが電話で言ってたわ」
「ふーん。そうなの。
ますますお兄ちゃんみたいだね」
「お兄ちゃんは明日はドバイ、戻ってきたら次はキューバに飛ぶらしいから、部屋でギター弾いちゃだめよ?うるさいんだから」
「お兄ちゃん仕事好きだねぇ…相変わらず」
そう言いながら、わたしはギターケースを持ち上げながら上着を羽織った。
「じゃあちょっと出かけてくるね」
「こんな時間に?危ないわよ」
「平気だよ。すぐそこのハイドパークで歌とギター練習するだけだし」
そう言って、呆れるお母さんを残し、ギターケースを背負って家を出た。