【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第11章 前の彼女 ☆
サミットの次の週、サミット会場の隣にできるカジノタワーのイベントホールで、ミニライブをやることになっている。
その打ち合わせが終わり、わたしは当日の資料を見ながらタクシーで帰宅した。
ガチャリ…と玄関のドアを開けると、LDKから安室さんが顔を見せた。
「おかえり。呼んでくれたら迎えに行ったのに」
優しい声でそう言ってくれる安室さん。
なのにわたしは、そっけない態度でそっぽを向いた。
「うん。タクシー使ったから大丈夫」
安室さんの顔が見れない。
あの人と、バイトが終わるまでずっと一緒だったんでしょ?
お客さんがいない時は、2人きりだったんでしょ?
そんなことばかり、頭の中を駆け巡ってる。
「リラ?なんか…怒ってる?」
「お、怒ってないよ!」
どう考えても怒ってる口調で、怒ってないよと言うわたし。
最悪だ…可愛くないにもほどがある。
「…お風呂、入ってくる」
プイッと顔を背け、わたしは足早にバスルームへと逃げ込んだ。
既に安室さんがシャワーを浴びたようで、バスルームには少し蒸気がこもってた。
曇った鏡をきゅっと手で拭い、鏡の向こうの自分と目が合う。
今のわたしの顔、すごく不細工だ。
嫉妬にまみれて、全然可愛くない…
わかってるのに。
そんな過去のこと掘り起こしても何にもならないことぐらい。
それでも思ってしまう。
このバスルームにも、あの子がいたの?
ここで一緒にお風呂に入ったりしたの?
「も…やだ…」
自分らしくないこのモヤモヤした時間に、わたしは頭からシャワーをかぶって項垂れた。