【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第11章 前の彼女 ☆
僕の彼女って、紹介してくれないの…?
どうして?
というか、復縁できないって言ってた割に、親しげなんだね。
てっきりもう口も聞けない仲なんだと勝手に思ってた。
「仕事までここでコーヒー飲んでいく?」
安室さんは、いつもと同じ笑顔で聞いてくる。
わたしが、こんな風にモヤモヤしてることなんて知らずに。
ひとつ、ひとつと心に黒いシミが出来て滲んでいく感覚がする。
「…いい。ごめん、帰る」
不自然に目を逸らして、わたしは逃げるようにポアロを出た。
そのままタクシーを拾い、打ち合わせまであと4時間はあると言うのに事務所に向かった。
前の彼女、可愛かったな…
絶世の美女というわけではないけれど、愛嬌があって、笑顔が可愛くて…
身体も健康的で、人懐っこい感じの。
あの人と、付き合ってたんだ…
あの人とキスしたり、抱きしめあったり…
それ以上のことも。
あの人の髪を撫でて、前にわたしにしたみたいに胸を触って、最後までしてたの…?
考えたくないことばかり次々に頭に浮かんでくる。
安室さんは、本当にわたしのこと好きなの…?
前の彼女と戻れないから、仕方なくわたしと付き合ってくれてる?
こんなの1人で考えたって仕方ないのに、心に出来た黒いシミがだんだん大きくなる。
嫉妬なんてしたくないのに、この醜い感情をどう処理すればいいのか、わたしには分からなかった。