【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第11章 前の彼女 ☆
安室side
「降谷さん。こっちです」
いつもの喫茶店、スーツ姿の僕は同じくスーツ姿の風見が手を振るのを見つけると、ため息を付きながらそのテーブルに近づいた。
「風見…そんな大声で僕の本名を呼ぶなと何度も言ってるだろ?」
「あ、すみません。つい…
コーヒーでいいですか?」
「ああ。」
風見はウエイトレスを呼ぶと、僕のコーヒーを代わりに注文した。
「来週のサミット会場の視察ですが、この配置で段取りを組んでいます」
そう言って風見がテーブルに広げた資料に目を落とし、
「うん…とりあえずこのままで行こうか。
当日、連携が途切れないように細心の注意を払って…」
そこまで言ったとき、風見が僕の方をじーーーっと見ていることに気づいた。
「…何だよ」
「降谷さん、もしかして…あの人と復縁されました?」
前も全く同じこと言っていたぞ…
そう思いながら僕はため息をつく。
「だから、復縁はありえないと言っただろ?」
「で、ですよね。すみません!」
頭を掻きながら謝る風見に、僕は思わず尋ねた。
「…どうして、復縁したと思った?」
「降谷さんから、甘い香りがしたような気がして」
甘い香り…
自分じゃ気づかなかったけど、毎日リラと一緒に眠っているから、リラが寝る前に塗っているボディークリームの香りが僕に移ってるのか…
チェリーブロッサムの甘い香りが。