【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第10章 初めてのデート ☆
安室side
家族の話をしたとき、リラが咄嗟に僕から距離をとったように思えた。
物理的な距離じゃなくて、心の距離。
母親に対して、お世話になる なんて表現使うか?普通。
そんな風に詮索をしようと思ったけど、辞めた。
僕には何でも話してほしいのに。
そう思う気持ちと、
誰にだって語りたくないことはある。
そんな考えが自分の中で喧嘩をする。
現に自分がいい例だ。
リラに、まだ偽りの自分しか見せていない。
本物なのは、リラのことが好きだという気持ちだけで、後はすべて嘘
そんなこと、知るよしもないリラは笑顔で僕の偽名を呼ぶ。
「安室さんは、好きな食べ物あるの?」
「…セロリかな」
「セロリ!?食わず嫌いかも…わたし」
そう笑うリラ。
好きな食べ物は、本当のことを言えた。
僕はこれから、リラにどれだけ嘘をついて、どれだけ本当のことを伝えられるだろう。
まだ始まったばかりのこの恋が、この先どう進んでいくのか全く見えないまま、ただ目の前のリラの笑顔を数えていた。