【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第10章 初めてのデート ☆
わたしも、安室さんのことをもっと知りたい。
好きな食べ物とか、好きな色とか…
他にもたくさん。
「安室さんは…」
ピリリリリ
好きな食べ物なに?
そう聞こうとした時、わたしのバッグの中でスマホが鳴った。
画面に表示されているのは
お母さん
わたしのイギリスに住む母からだった。
「あ。…お母さんからだ。
出ても良い?」
「どうぞ」
一言安室さんに断った後、通話ボタンを押した。
「もしもし?珍しいね、お母さんがかけてくるの」
「リラが全然かけてこないからでしょー?
最近、忙しいの?」
わたしの母はやり手の国際弁護士。
電話口の後ろでビジネスの話が聞こえてくるから、多分仕事中の合間を縫ってかけてきたんだと思う。
「あぁ、まあ色々あってちょっと忙しかったんだ。
もう落ち着いたから、大丈夫。」
「そう?あまり無理しないようにね。」
「お母さんの方が忙しいでしょ?
売れっ子弁護士なんだから」
「そうでもないわよ。昨日は一日オフだったし。
休みが取れたらロンドンに遊びに来なさいよ?」
「うん。わかった。
じゃあ、ご飯食べてるから切るね?」
たった数分の短い電話でわたしたちの親子の会話は十分だ。
電話を切った後、安室さんが目を丸くしてこちらを見てくる。
「?」
「あ…いや、お母さんと普通に仲良いんだなーと思って。
ほら、この間どうしてイギリスに着いていかなかったんです?と聞いた時、意味深なこと言っていたからてっきり不仲なのかと」
「…ああ。ちゃんと仲良いよ?
しょっちゅう電話してるし、お母さんには、ほんとにお世話になってばかり」
「そう」
安室さんはそれ以上聞かなかった。
わたしが無意識のうちに心のシャッターを閉めたのを、見抜いているんだろうか。
わたしの家族は普通とは違ってる。
だけどそれを安室さんに知られたくなかった。
今まで、誰にも話したこと無い。
同情なんて、されたくなかったから。