【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第10章 初めてのデート ☆
安室side
愛車を走らせて、国立科学博物館に向かった。
だんだん上野に近づくにつれ、助手席に座るリラの顔が、まるで遠足を楽しみにしている子供みたいにキラキラしてくる。
可愛いな…
リラの今日の格好も物凄く可愛い。
白のシフォン素材のシャツブラウスに濃い色のデニム、黒のパンプス、変装用の伊達メガネ
髪はハーフアップにしていて耳につけた華奢なピアスが見える。
この間までは、さすが芸能人…そう思っていたけれど、今日は違う。
可愛すぎるな。僕の彼女は…
心底そう思う。
博物館に着き、チケットを買うとリラは
「恐竜の化石が見たいの!」
そう言いながら、リラは僕の腕を引いて一目散に地下一階の地球環境の変動と生物の進化の展示に走った。
ティラノサウルスの骨格標本の前に立つと、リラはじーっと上を見上げてそれを見ている。
「…恐竜、好きなんですか?」
「恐竜が好きと言うか…なんか、こう言うの見てると、自分がちっぽけな存在だと思えるから」
そう言って上を見上げるリラの横顔は、どこか寂しそうに見えた。
「やっぱり、大変ですか。有名人というのは」
「そうじゃないけど…まあ、でもたまにね、苦しくなるの。
大好きな歌を歌っているのに、ただ楽しいだけじゃないこともあって」
そう言って、ワザと明るく笑うリラ。
「だけど、こんな風にスケールの大きいものを見たり、感じたりすると、自分の悩みや存在なんて取るに足らないことだと思えるから、安心するの。
…変かな?」
「全然。…むしろ、そう言う君の一面が見れて、嬉しいです。」
「え…」
「君の、眩しいぐらい輝く姿は十分に見ているから、僕だけが知っている顔が、もっと増えていったらいいのにと思ってた」
なんて、自分の本名すら明かしていない僕が何言ってるんだろう。