【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第2章 運命を信じる?
日本人離れした歌唱力、透き通るようなミックスボイスに、決して外さないピッチ。
何より、歌っている曲のメロディがキャッチーで、僕はこの ハルジオン という曲に、なぜか懐かしさを感じた。
この曲に出てくる、「あなた」が、知っている人を言っているような気がした。
どうしてだかわからないけど。
探偵事務所にいた面々も、この歌に釘付けだった。
さっきまであんなに文句を言っていた毛利探偵も。
あなたを忘れられない
時間は止まったまま
戻れない日々
あなたがいなくても歩いていかなきゃいけない
そんな歌を、気持ちを乗せて歌っていた。
「…こんなに苦しそうに歌ってるのに、どうしてこんなに感動するんだろう…」
そばにいた蘭さんがぽつりとそう呟いた。
繊細なメロディーと、歌詞とは裏腹に、彼女の歌っている表情はとても苦しそうだった。
「安室さん?安室さん!」
さっきからコナンくんが僕の名前を呼んでいたようで、僕はハッとしてコナンくんの方を見た。
「あぁ、ごめん。」
「安室さん…涙が…」
そう言われて、自分の頬に涙が伝っていたことに気づいた。
「え…変だな」
歌を聴いて泣くなんて、どうかしてる。
それほど、今の歌がまるで僕の今の心情を歌っているように思えて、しばらくテレビの中の歌姫から目が離せなかった。
そうだ。
確かこの歌声、前にラジオで…
そう、彼女と別れた日の帰り道に車の中で聴いた声だ。
運命なんて信じない。そう言い切った…
この人も、きっと僕と同じように忘れられない愛した人がいるんだろう。
彼女の歌を聴いて、そう思った。
Lila…
雨宮リラか…
…ふ。本名なんて覚えてどうするんだ。
そう思いながらも、僕の頭からしばらくその名前が離れなかった。