【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第8章 タイムリミット
僕は何も言わず、リラに背を向けたまま身体だけ真ん中の方へ動かした。
「…こっち向いてよ」
そんな風に惑わして、僕の思考全部気付けばリラで埋め尽くされてる。
言われるがまま、僕はゆっくりと身体をリラの方へ向けた。
リラの、綺麗なビー玉見たいな瞳と目が合う。
すっぴんでも、間違いなく綺麗なその顔に見惚れていると、リラは僕の顔を見ながら言う。
「…なんか、今思えば不思議だね。
恋人でもない、もういい年の男女が知り合った当日に一緒に住むことになって…
気付けばこんな風に、向かい合って寝てる。」
「…ですね
君は、よくここに来ましたね。
普通、知り合ったばかりの男と住むのは嫌でしょう」
「…それがね、全然嫌じゃなかったの。
何でだろうね。
…安室さんだったから…かな…」
リラは困ったように笑った。
その言葉を聞いて、僕は咄嗟にリラの首の下に腕を通し、そのまま腕枕をするようにぎゅっと抱きしめた。
「あ…むろさん?」
「…最後だから、抱き枕にぐらいさせてください」
「…うん」
リラはゆっくり、遠慮しがちに僕の胸に擦り寄った。
最後だから
むしろ、最後なら、手を出しても良いんじゃないか。
そう思う自分もいる。
僕だって男だし、好きな子と一緒にベッドで抱きしめ合って寝るんだから、我慢できなくて当然だ。
そんなことを思うのに、そうしないのは、リラは僕にとって、輝く彗星だから。
決して汚してはいけない綺麗な海のような存在だから。
リラ、僕はこの1ヶ月、君と一緒に過ごして思ったよ。
僕にとって、君は眩しすぎてとても手が出せない。
近付けば近付くほど、目が眩む。
だからこの想いは綺麗にしまって、また前みたいに君を遠くから眺めることにする。
そう決めた。
だから、今だけ。
今だけは、このまま…
そう思いながら、僕はリラの身体をぎゅっと抱きしめた。
そして、髪に鼻を埋めてリラの香りを脳に刻みつける。
チェリーブロッサムの甘い香りを。
最後だからと何度も言い訳をして。