【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第8章 タイムリミット
安室さんの腕に抱かれると他のことなんて何も考えられなくなる。
このまま本当に安室さんの抱き枕になりたい。
わたしにしては珍しく、そんな非現実的なことを願ってしまう。
明日は歌番組の生放送。
なのに、眠りたくない。
眠ったら、この安室さんの体温も、匂いも、全部感じることができずに朝を迎えてしまう。
そしたらもう、お別れだ。
ねぇ安室さん。
わたしは、ここにきて本当は物凄く癒されていたの。
誰もいないただ広いだけの部屋にただいまを言うあの毎日は、表舞台で輝いている姿とは裏腹にとても質素で、寂しかった。
おかえりと、安室さんに言ってもらえるだけで、嬉しかったの。
夜ご飯を一緒に食べてくれるだけで、嬉しかった。
ぎゅ…っと安室さんの胸の中に擦り寄ると、安室さんの心臓の音が聞こえる。
まさか最後の夜に、初めてこの音を聞くことになるなんて。
けれど、今だけ。
今だけはこのまま、安室さんの腕の中に包まれていたい。
最後だから…
最後…だから…
朝がこなければいいのに。
そう思いながら、わたしはゆっくりと目を閉じた。