【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第8章 タイムリミット
しばらくするとパトカーから佐藤刑事と高木刑事、そして毛利さんと蘭さんが降りてきて、犯人であるわたしの元彼氏に手錠を掛けた。
「あ…待って!」
わたしは思わず連行する刑事さんたちを呼び止めた。
「その…彼もわたしも、芸能人というやつで…
こういうの、仕事に支障が出るので、できれば内密に…」
「…でも、いいんですか?
内密にとなると、厳重注意と接近禁止命令くらいしか…」
「…一応、その人と付き合ってたので…
信じてます。もう二度としないと」
そう言うと、元彼氏はわたしの方を見て悲しそうに少し微笑んだ後、パトカーで連行されて行った。
事態が丸く収まったのを見届けると、毛利探偵が大満足したように満面の笑みで言う。
「これで一件落着ゥ!!」
「お父さんなんにもして無いじゃない!
安室さんがずっと守ってたんでしょ?」
蘭さんがもっともなツッコミを毛利探偵に入れると、図星を突かれウォホンと咳払いをしてわたしを見た。
「これで、ようやく自分の家に帰れますな!リラさん。」
「え…」
そうだ。
ストーカーが捕まった。
つまり、もうわたしは安室さんと一緒にいる理由がひとつも無くなったと言うことだ。
まさか、こんなに突然タイムリミットが来るなんて…
心の準備が出来てなかった。
でも、もし安室さんがまだ一緒にいたいと思ってくれてるなら…
わたしも、安室さんと…
そんな一縷の望みをかけて、安室さんの方を見た。
「そうですね。リラ、家に帰れるよ。
良かったですね」
わたしのほんの少しの愚かな期待は、あっさりと儚く砕け散った。
安室さんは、良かったね。と言いながら、出会った時と同じ笑顔で笑った。
笑顔の奥が見えない人だな。
そう感じたあの笑顔で。
自惚れていたんだ…
何度もキスをしてくれたから、少しでもわたしのこと愛しいと思ってくれたんじゃないかって。
でも、やっぱり違った。
正真正銘の、タイムリミットだ。