【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第8章 タイムリミット
怖くて震えていると、安室さんが抱きしめてくれた。
温かい腕の中で、だんだん心が落ち着いていくのが手に取るようにわかる。
だけど震えは簡単には治らなくて、カタカタと手を揺らしながら必死に安室さんに抱きついていると、安室さんはゆっくりわたしから身体を離し、
「リラ…大丈夫だから…」
そう言った後にわたしの唇に自分の唇を重ねた。
まるで、暖かい毛布みたいなキス。
幸せな気持ちに包まれた時間は、触れるだけのたった数秒で、わたしは思わず彼に縋るように言った。
「もっと…キスして…」
「…うん」
わたしの目を見つめて、安室さんがたくさん、たくさんキスをくれた。
安室さんの唇が触れた箇所がどんどん熱くなって、まるで毒に溶かされたみたいに反応する。
そんなわたしから、ぽろ…と無意識に出た言葉が
「…苦しい…」
だった。
好きが溢れて、苦しい。
安室さんが触れるたびに、もっともっと安室さんの近くに行きたくなって、苦しい。
わたしのこと、好きになって欲しくて苦しい。
安室さんが、好きな女の子のことを考えると、苦しい。
恋って、こんなに苦しいんだっけ?
「リラ…」
安室さんが戸惑ったようにわたしの名前を呼んだとき、パトカーのサイレンが聞こえ、だんだん近くなってきた。
「警察、来たな。」
そう小さく言った安室さんは、わたしから身体を離した。
離さないで…
そう思ったのも虚しく、安室さんに全部吸い取られて空っぽになったわたしの身体だけが取り残された。