【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第8章 タイムリミット
表情がいつになく強張っていて、思わず安室さんを見た。
きっと、探偵業の依頼人のひとだよね…
そう言い聞かせて、足早に公園の自販機へと向かった。
…元彼女だったらどうしよう。
不意にそんなことを思ったわたしは、フルフルと首を振り、自販機にお金を入れた。
「えーっと、安室さんはコーヒーで、わたしは…」
爽健美茶のボタンを押そうとした時、突然後ろから手が伸びてきて、わたしが押そうとしたボタンを押した。
「えっ!?安室さん、電話終わったの?」
そう言いながら、安室さんだと確信して後ろを振り向いた。
ガタンと自販機からペットボトルが落ちる音と同時に、わたしの表情は凍りついた。
「リラちゃん」
「え…」
立っていたのは安室さんじゃない。
そこにいたのは、わたしの付き合っていた人だった。
あのラジオ収録の終わりにわたしを振って、公園に置き去りにしたあの元彼氏
「え…どうして?」
なんでここにいるの?
偶然?
そんなわけないのは分かってるし、この状況が何となく不気味でわたしは思わず後退りをする。
「何度も、手紙書いたのに、どうして無視をしたの?」
「手紙…?」
「ライブも中止にしろって言ったのになあ」
「まさか…ずっとストーカーしてたの、あなた?」
まあでも、そう考えると、わたしの家にカメラと盗聴器があったのも頷ける。
一度だけ、家にあげたことがあったから。
それに、この人の職業は俳優。
局の楽屋のロッカーに写真が貼られていたのも、関係者だからだ。
でもどうして…?
この人から、わたしを振ったのに。
そう思っているのが、顔に出てたんだと思う。
その男はわたしの両肩をガッと掴みながら詰め寄ってきた。