【R18】 Begin Again【安室透/降谷零】
第8章 タイムリミット
「うわ!美味しそうー!」
久しぶりのスイーツだ…!!
そんな風に目を輝かせるわたしを見て、安室さんが笑う。
「まるで、宝くじが当たったみたいな顔しますね」
「このパフェを前にして、クールでいるほうがどうかしてるでしょ?」
そう言い返しながら、スプーンを持ってドキドキしながら上に乗ってるクリームを口に運んだ。
生クリームを食べたのはいつぶりだろうか。
「んんー!最高。幸せ…」
「そんなに好きなのに、食べないようにしてるの、辛くないですか?」
「辛いよ?辛いけど、まあ仕方ないかな。
17ぐらいの時、ほんの少し太った時期あったんだけど、歌声が少し変わったんだ…
身体が楽器だから、体型はちゃんとキープしないと…」
わたしは、特別な人間じゃないし天才肌でも無いから、少しの辛さは仕方ないかなと思ってる。
大好きなデザートを食べられないことより、大好きな歌が歌えない方が嫌だったから。
つくづく、わたしは歌うことしか脳がない人間で、歌がなくなったら本当にわたしに価値なんてなくなってしまう。
でもきっと、男の人ってなんでも好きな時に好きなものをいっぱい食べる女の子の方が好きだよね。
…安室さんの元彼女も、そんな人だったのかな。
わたしみたいに、小賢しい食事制限なんて、してなかったのかな。
最近、安室さんの元彼女と自分を比べて落ち込むことが多い。
一度も会っていない癖に、ただの妄想で。
バカだな。
そう思うのにやめられない。
そんなわたしに、安室さんはまた優しく笑って言う。
「…じゃあ、今日は何でも好きなもの食べましょう」
「…うん!」
優しい。
こんな優しくて素敵な人、きっとわたしなんかよりもお似合いの人がいるよね。
変装も不要で、食事制限も不要で、安室さんを一番に考えてくれる。
そんな女の子がきっと…いるよね。