第19章 羽折れの天使
卍 卍 卍
目の前に広がるのは漆黒の海
寸分先も見えず、ただ何もない空間に私は1人立っているだけだった.....
『ここはどこ?』
見渡す限りの闇にリツカは恐怖を覚える。
そこはまるで真一郎と再会したあの暖かい空間ではなく、どこか冷たい空間だったからだ。
震える自分の腕をにぎりしめ、ただじっと恐怖に耐えた。
『(寒くて虚しい世界。広いのか狭いのか全く分からないまさに暗闇だな。ここはきっと夢の世界なんだろう。)』
すると目が眩むほどの光源が刺し咄嗟に目を守るためにリツカは目を瞑る。
そして次に目を開けた時には地獄が広がっていた。
目の前にはむせ返るほどの血の匂いが鼻につき、視線を向けると血溜まりと肉塊が転がっている。
吐き気がした。
ただ目の前の現実が地獄そのものに見えた。
『ヒィッ.....』
1秒でもこの場にいたくなくて、逃げようとしても体がまるで縫い付けられたように動かない。
『なんで.....なんで動かないの!?』
逃げたくても逃げれない光景にリツカは耳を塞ぎ、目をつぶった。
すると目の前から微かに誰かの声が聞こえてきた。
「───?」
『(誰かいるの?)』
聞き取れない雑音まみれの声に恐る恐る目を開けるとそこには血まみれで倒れている、死んだはずのドラケン、場地、千冬、海國、海寿の姿があった。
『みんなっ!』
半ば悲鳴のような声で目の前に倒れる人達に声をかけるが、反応がない。
『(落ち着け落ち着け!早く治療しないと!致命傷は避けてあるけどあの怪我じゃあ......)』
そんな考えがぐるぐるとリツカの中を巡る中、場地の背後から1人の少年が姿を現した。
少年は右手にナイフを持つと場地に向かって思いっきり振り下げた。
「ぐっ.....うあ゙あ゙ッ!!」
『圭介!!』
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ッ─────!!!」
耳を塞いでいるにも関わらず、叫び声に混ざり、肉が避ける音と血が溢れ出る音が鮮明にリツカの鼓膜に響き渡る。