第16章 小さき眠り姫
「すみません。それで.....?」
混乱する中すかさず三ツ谷が看護師に尋ねる。
「男性の方のご家族とは連絡が着きましたが、女性の方のご家族とは連絡がつかなくて.....その。女性の方のご家族の方は?」
その問いかけに誰もが口篭る。
恐らく彼女の家に連絡しても父や母は来ないだろう。
来たとしてもせいぜい執事の東堂と妹の杏花が来るだけだ。
しかし、彼女の家から病院まではかなりの距離がある。
自分たちは家族ではない。
だが、ことは一刻を争う。
家族名乗っていいものなのか迷っているとマイキーが医師と看護師の前に立った。
「俺.....です。」
「最善は尽くします。ですが、女性の方はここに来る前に1度脈が止まっていた分厳しいかと.....この手術で身体が耐えられるかどうか.....」
【ッ!】
「嘘だろ?脈が.....」
「最善は尽くします.....」
医師はそれだけ伝えると中に入ろうとした時だ。
看護師が顔色を真っ青にして飛び出してきた。
「先生!前の患者さんの手術で女性の方と同じ血液型の輸血パックを使って、輸血パックの保存がほとんどありません!」
「何だと!?今から血液センターに連絡しても間に合わないぞ!!」
神様はどうやらリツカを相当気に入っているらしい。
何度彼女をその御手に呼ぼうとすれば気が済むのか......
何度彼女を自分たちから奪おうとすれば気が済むのだろうか。
マイキー達はギリィと血が滲むまで拳を握りしめる。
「嘘だ....また俺たちはアイツを守れなかったのか.....?」
「("また”?さっきからずっと言ってる。どういうことだ?)」
「クソッ!なんでアイツばかり.....」
「っ!あの!俺の....俺の血を使ってください!」
「!」
そう言って千冬は医者の前に立つと特服の袖を捲り上げ自身の腕を差し出す。
「ですが!」
ボロボロで血を流している彼らの姿を見て医師は一瞬たじろぐ。
しかし、千冬は構わないと言わんばかりに医師に詰め寄った。
「俺はアイツと同じ血液型です!アイツは場地さんを救ってくれた。恩返しがしたいんです!」