夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第1章 恋人同士とは(i7)完
ぽつりぽつりと地面に黒いシミができる。
そのシミがコンクリート一面を覆うまで、あ、と言う間も無かった。
小降りの雨が、私を濡らす。
そのままずぶ濡れになっても構わないと思いながら。
とぼとぼ、覚束ない足取りで街を歩いていた。
こんな雨の日には、いつも答えの無い考え事をしてしまう。
自分は、いつから間違えていたんだっけ。
上手く友達を作っていたつもりだった。
小さい頃から、私は女の子も男の子も関係なく、仲良く遊んでいた。
できるだけ良い子で居れば、人気者になれると思って。
でも、ある日私は友達にこう言われた。
「香住さんが、私の○○君を横取りしたの!」
クラスに響き渡る、友達の声。
一斉にこちらに向けられた視線は、どれも。
物凄く、冷たかった。
あの日から私には、男好きという噂が付き纏った。
そんなつもりで、男友達を作っていた訳では無いのに。
ただ純粋に、皆と仲良くなりたかっただけなのに。
良い子になって、人気者になって、沢山の友達に囲まれて過ごしたかっただけ。
男だとか女だとか関係ない。
私はただ、寂しかったから。
ずっとずっと、寂しかった。
誰かと友達になるのに、時間なんて必要ない。
笑って話しかけて、そばに居れば仲良くなれる。
私は良い子だから、すぐ友達になれる。
――本当に?
あんな噂が流れている自分は、本当に良い子なの?
せっかく友達になっても、皆いつもすぐどこかへ消えてしまうのに。
いつも、一人になるのに。
もしかしたら、私は悪い子なのかもしれない。
悪い子だから、神様が罰を与えて、私を寂しくさせるのかもしれない。
神様が、お赦しにならない事を、私がしたから――?
あの日、あの時、私があんな事を言わなければ――?
いや、違う。
神様なんて居ない。
私は悪い子じゃない。
本当に――?
分からない。
「今日は、もう帰らなくてもいいかな」
誰にともなく呟いた私の声を、通りすがりの知らない男の人が拾う。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん? 帰る家が無いのかい?」
曇った私の瞳が、目の前の男の人を写す。
どうだっていい。
どんな目にあっても構わない。
ただ、今は現実から逃れたい。
私は、その男の人に着いて行く事にした。
「ねぇ、私今とってもおなかが空いてるの」