夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第1章 恋人同士とは(i7)完
どっちつかずな間柄。
友達以上恋人未満とはよく言ったものではあるけれど。
私達の関係性は、そんな簡単なものでは終わらなかった。
いや、むしろ既に終わった関係性だったなら私達はここまで悩まずに済んだのかもしれない。
とある曇り空の日、珍しく学食で食べなかったお昼。
私と壮五は聞いてしまった。
何という事も無い噂話を、女の子達が勝手に広げている。
その噂は、きっと最初は小さなものだったのだろう。
でも今は、見過ごせない状態にまで発展してしまっていた。
「知ってる? とある大企業の御曹司の噂!」
小声なのに抑えきれていない女生徒の話し声が、テーブルに座っている私達にも聞こえた。
「えー、なんだっけ。実は付き合ってる人がいるみたいな話?」
「そうそう! その付き合ってる娘って、これまで色んな男たぶらかして裏切って、相当自由してたらしいよ」
「うっそヤッバ! その女かなりの悪女じゃん!」
「でね、恋人で散々遊んだ挙げ句、他の男にも手を出して、自殺しちゃった人まで出たらしいよー!」
「マジさいあくなんですけど。それでそれで?」
「で、自殺しちゃった男の霊が取り憑いてて、今じゃ誰もソイツとつるまないって噂!」
けらけらと笑いながら話す彼女達が、居なくなってくれるのを待ってから、私は壮五に謝った。
「ごめんね、最近変な噂が増えちゃったみたいでさ。お詫びになんかデザートでも奢るよ、何食べたい?」
気まずさからそう口にしたけれど、向かいに座っている壮五は一言も話さない。
これはもう潮時なのかな寂しいな、なんて考えていたら、ぽつりと何かを壮五が呟いた。
「君は、何も感じないのか?」
たったそれだけ。
詮索もしない、怒りもぶつけない、だからと言って心配もしない。
ただ、どこか押し殺したような声を聞いて、私は壮五の顔から意識的に視線を反らした。
気づかない振りをすれば、まだ、友達で居られるかななんて悪い考えを持ちながら。
「何が?」
と、笑顔で返した。
その日から、壮五と話す機会は無くなってしまった。
そういえば、あの日の帰り道は、嫌な雨が降っていたな。