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夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】

第6章 恋人同士とは番外編3


 大事な、大事な大事な大事な人を、傷つけてしまった。
 その後悔は他人には計り知れないほど深く、重たい。
 壮五はそんな気持ちを誰にも吐露する気が無かった。
 寮では普段通りに過ごし、レッスンでは普段通り取り組み、仕事では普段通りに振る舞った。
 はずなのに、仕事から寮に帰ってきて、大和が一言。
「タマが、ソウの様子が変だって心配してるぞ」
 壮五はもう何も考えられなくなった。
 帰ってきたそのままの姿で、涙が勝手に零れ落ちてくる。
「おい、どうしたんだよ、ソウ?」
 大和の声には、驚愕と労りが含まれていた。
 急に泣いてしまった事への焦りと、純粋な心配。
 でも、どうしたと急に聴かれても、壮五は答えられる心理状態じゃないのだ。
「なんでもないんです。ご心配をおかけしてしまって、すみません大和さん」
「なんでもない顔してないでしょうが。まあまずはソファにでも座れよ。大丈夫、じゃないよな。とりあえず飲み物用意するよ。何飲みたい? お兄さんが何でも取ってきてあげますよ」
 今すぐ事情を聞き出そうとしないところが、壮五にとってはありがたい。
「すみません大和さん。お言葉に甘えさせてもらいます」
 一言添えて席に着く。
 飲み物はコーヒーを頼んだ。
 それが最善だと思ったから。
 気分的には、コーヒーよりほうじ茶だったけれど、大和に迷惑をあまりかけたく無かった。
 大和は壮五のオーダー通りコーヒーを淹れて、隣に座ってくれた。
 大和の手の中では、壮五のとは別に大和の分のコーヒーが、ゆらゆらと静かに湯気を立てて、大和の手の平を温めている。
「で、どうしたんだよ。お兄さんに話してみなさい。ゆっくりで良いからさ」
 最後の一言に、大和の優しさが詰まっている気がして、壮五はまた泣きそうになったけれど。
 ここで泣いても大和が困るだけだと、ぐっと涙をこらえた。
「実は・・・・・・」
 と、話し始めようとするが、何から話せば良いのか分からず黙ってしまう。
 壮五は一度深呼吸をして、まず心を落ち着かせた。
「実は、もう友達やめるって、香住さんから言われてしまって――」
「それは、辛かったな」
 辛かった。
 そう言われて、何かが違うと壮五は感じた。
 何だ、何が違うんだ。
 頭の中だけでは纏まらず、口に出す。
「僕は、辛かったんじゃないと思うんです。そうじゃなくて――」
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