夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第5章 恋人同士とは番外編2
一体、昨晩自分はカエデに何をしてしまったのだろうか。
壮五は焦る。
だが、仕事は待ってくれない。
何とかして、今すぐにでもカエデの家へ駆けつけたい衝動を、なんとか抑える。
壮五はグループアイドルだ。
仕事をすっぽかせば、メンバーにも関係者にも事務所にも迷惑をかける。
それは壮五にはできない事であった。
仕事をなんとか全て終え、壮五はその足で寮へ戻らず、カエデの家まで来ていた。
仕事が終わってすぐ、壮五はカエデに、今から家に行っても良いかとラビチャを送ったが、返事は無い。
もしかしたら、迷惑なだけかもしれない。
それでも、何も話し合わずにカエデを放っておく事なんて。
壮五にはできなかった。
居ても立っても居られないのだ。
家の前まで来て、ノックしようとして上げた手を止める。
ここまで来て、拒絶されたらどうしよう。
そんな思いから、壮五は手袋を外して携帯を取り出し、カエデに通話をかけた。
お願いだ、出てくれ――!
と、祈りながらコール音を聞いていた。
四度目のコール音で、カエデが出る。
「はい、香住です」
その声は、やや掠れていた。
ちゃんと食事を取っていないのではないかと心配する。
だがそれよりも、通話に出てくれた事に、壮五はほっとした。
「壮五? ごめんね。もう私、どうしたらいいのか分からないの。キスなんてしちゃって、本当にごめんなさい」
カエデの声は震えている。
何かに怯えているような、か細い声だった。
キス――。
という言葉に、壮五は一瞬首を傾げた。
「一体、何の事を――?」
言いかけて、昨晩の記憶の蓋が、突然勢いよく開く。
寒い空の下、カエデの家の傍で、確かに壮五はカエデの唇にキスをした。
柔らかくて、ちょっぴり冷たくて、ほのかに甘かった。
それを今、鮮明に思い出した。
あの時の自分は、どうかしていたのだ、きっと。
壮五は顔を真っ赤に染める。
「ご、ごめん! 僕は女性になんて事を! あの時は香住さんが酔った顔が可愛くて、ついあんな! いや、これは言い訳にしか聞こえないだろうけれど、でも! 本当にごめんね――」
「ねえ壮五」
壮五の言葉を遮るように、カエデが語りかける。