夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第5章 恋人同士とは番外編2
当たり前だ。
寝て起きれば酔いなど簡単に醒める。
酔いが醒めれば、記憶を正しく辿って、考えられる。
後悔するカエデ。
「なんであんな事しちゃったんだろう。私と壮五はそういうんじゃないのに。今までキスなんて何度もされた。どの時も、心のどこかで嫌だと感じてた。なのに壮五としたキスはむしろ、むしろ――」
その先の思考に怯える。
壮五とは、そういう関係なんかじゃない。
そんな関係になってしまえば、今までのように気軽に会えなくなる。
だけど、もう遅い。
カエデは既に、自身の本心に気付いてしまった。
――私と壮五は友達でしょ。
昨日自分が言った言葉が脳裏を過る。
友達なら、あんな事はしないはずだ。
なのにどうして、キスなんてしてしまったのだろう。
いや待て、落ち着け自分。
と、カエデは自身に語りかける。
深呼吸を一つ、二つ、三つ。
だが、冷静さがまだ足りない。
いや、正確には冷静ではあるのだ。
ただ混乱と困惑がそれを上回って、カエデを振り回しているだけで。
どうしたら・・・。
「どうしたら、私は壮五の隣で笑える?」
その自問に、答えをくれる者は居ない。
一方、壮五は仕事の準備をしていた。
元旦ではあるが、アイドリッシュセブンに正月なんてものは関係無い。
正月であろうが盆であろうが、ファンのために仕事をする。
それがアイドルという物だ。
幸い、壮五はそれほど沢山の酒を飲んでいた訳でもなかったので、二日酔いに悩まされる事もなく。
他のメンバーが起きてくる間、ゆったりコーヒーを飲んでいた。
そう、壮五は昨晩の事を、何も覚えていなかったのである。
携帯に通知が入った。
カエデからだ。
内容は、シンプル。
ラビチャに一言、こう書いてあった。
「もう、友達で居られないかもしれない」
突然の友人からの言葉に、壮五は一瞬思考が止まった。
どうしてこんな事になってしまっているのか。
壮五には思い当たる節がない。
そこで、昨晩の記憶を初めて探ってみた。
が、びっくりするほど何も覚えていない。
一緒に神社へお参りし、日本酒を飲んだ事は覚えている。
その先の記憶がない。
おそらくこれが原因なのだろうと考えた。
だが、肝心な所が何も分からない。