夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)未完
もしも、私が普通の子として産まれていたのなら。
そんな、無意味なタラレバが何度も頭に浮かんでは、かぶりを振ってなんとか払拭する日々を送っていた。
もしも声が普通に出せたなら。
もしも、もっと自信を持てる顔に産まれていたのなら。
そんな事、親の前では絶対に話せない。
思う事は何度もあった。
謝るくらいなら、もっと私を見てよと、叫びたくなる時だって。
だけど、それはできない。
なぜなら母と父は私を育ててくれたから。
私を育てるのは苦労の連続だっただろうと思う。
特に、乳幼児期の私を母がどうやって育ててくれたのかを考えると、頭が下がる思いだ。
母はきっと、私のかすかな息づかいに耳をそばだてて、泣いているかどうかを判断してくれていたのだろう。
私に付きっきりの母の代わりに、父は仕事を休んで、もしくは仕事を辞めて、家事をこなしてくれていたに違いない。
過保護な両親の事だ。
父も母も、ベビーシッターを雇う人には思えない。
私はきっと、並大抵の手間がかかる子どもではなかったはずだから。
お乳が欲しくなっても、泣き声がしない。
道で擦りむいても、誰にも声が届かない。
迷子になれば二度と再会できないだろうし。
誘拐されても、やめて助けての一言さえ、伝えられないのだ。
私は両親に、絶対に離れないように、傍に着いているように言われて育った。
いつからだろう。
そんな両親に、優しさではなく、窮屈さを感じるようになってしまったのは。
いつからだろう。
一人で出かけたい、一人でやってみたいと、伝えて、反対されるのが恐くなってしまったのは。
いつからだっけ。
私は、我儘な娘に育ってしまった。
今でも、両親は片道一時間かけて、二週間に一度、グループホームまで私に会いに来てくれる。
心底鬱陶しく思ったのに、表面では笑顔を貼り付けて。
父に、母に心配されたら、グループホームさえも許してもらえない気がして。
それが嫌で。
私はいつも、嘘をついていた。
元気か、仕事に慣れたか、友達はできたか、寂しくないか、お金はあるのか。
その質問に、全て「はい」と答えて。
本当は、沢山、沢山、思うところがあるのに。
私は何一つ、両親に話せずにいる。
明後日は、両親が会いに来る日だ。
気が重くなるけれど、全て、自業自得だった。