夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)未完
だったら、余計に私はお邪魔虫なのでは?
タレントの休日を、ただのテレビ局員が潰す訳にはいかない。
私は頭を下げて、荷物を持ち、その場から歩き出した。
そんな私の勝手な行動が、後に大変な出来事に発展するなんて。
この時は思いもしなかった。
ただのテレビ局員にスポットライトを当てられて、アイドル達の間で話題になるなんて。
誰が想像できただろうか。
自宅に帰ってくると、一人の中年女性がいつも通り出迎えてくれた。
ここは、障害のある人が助け合って暮らすシェアハウスのような施設で、グループホームという。
私が利用しているのは、二十四時間三百六十五日、スタッフさんが居てくれるところで。
この女性は、ここのスタッフさんだ。
彼女は健常者だけれど、障害者にとても理解のある人。
私が手話で「ただいま」と言うと、手話で「おかえり」と返してくれる。
ああ、落ち着く。
このグループホームは主に、身体障害者が集まっていて。
私以外だと、聴覚障害者や運動障害者、視覚障害者の人が居る。
世界は私が見る限り意外と狭くて、思いの外広い。
そんな中途半端な世界の中で、私は生きている。
私の両親は、私の一人暮らしを強く反対した。
私がこんな喉で生まれたから、仕方のない事だとは分かっているつもりだけれど。
それでも、ちょっと過保護なんじゃないか、とふと思ってしまう事もある。
対してこの女性、水谷さんは良い意味で対等に接して下さるから。
ありがたい、とても。
水谷さんは、私が玄関から中に入っていくのを、黙って見守って下さっている。
私は声が出せない事以外は、大抵の事はできるから。
むしろ水谷さんの手伝いを私が申し出る事も多い。
スタッフさんは、水谷さん以外にも二人くらい居て下さっているけれど、私が一番お世話になっているのは彼女だ。
私の母より少し若いくらいのお年で、なのにお母さんと呼びたくなるような温かさがある。
その雰囲気や心配りに、私はいつも助けられていて。
でも私と水谷さんは、あくまで利用者とスタッフという関係。
それ以上になる事はないと分かってはいながらも、甘えさせてもらっている。
私の母は、私に何度も「ごめんね」という呪いのような言葉をかけてきた。
私はその言葉を、未だ受け入れられずにいる――。