夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第5章 恋人同士とは番外編2
カエデが思い出すのは、初詣のあの日あの時の出来事。
神社へ一緒にお参りして、一緒に御神酒を飲んだ。
新年だねーって、他愛もない話をして。
お互い少しお酒に弱くて、どうしよっかって。
それで周りを見渡せば、意外にもそれなりの数のカップル達の姿。
仲良く恋人繋ぎをしていて、とても微笑ましい。
「ああいうのって良いよね。すっごい憧れる」
正直な感想をカエデが述べれば、壮五は締まりの無い顔で、そうだねーと答えた。
そのまま初詣を終えた二人は、ほろ酔い気分で家路につく。
時刻はもうすぐで一時になろうとしていた。
「壮五、寒くない? 温めてあげよっか?」
酔いが回り始めると、人は大胆になる。
カエデは手袋を外し、壮五の両手を包み込むようにして握った。
「わっ! 思ってたより冷たいね」
「んふふー。そうかなー」
デレデレとしている壮五。
そのまま、指先を絡めるようにして、壮五がカエデの手を握り返す。
「あったかいねー」
「そう? なら良かった。もう少しこのままで居よっか?」
「うん! 僕、カエデちゃんの事だーいすき」
突然下の名前で呼ばれた。
だが、そこにカエデの頭は働かない。
そればかりか、壮五に顔を近づけて、甘い声で耳打ちする。
「私も壮五の事、だーいすき」
ここで離れれば良かったのに、二人はそうしなかった。
一度近づいた顔がもっと、更に近づいて唇が触れ合う。
壮五からカエデに、優しいキスが贈られた。
それは一瞬の出来事で、カエデはぽかんとしている。
壮五は、名残惜しそうに、冷え始めた両手にゆるく力を込めた。
「まだ、帰りたくないなー。僕、カエデちゃんとずっと一緒にいたいよ・・・」
「また、明日会えば良いじゃん。壮五と私は友達・・・でしょ?」
友達。
そう言ったけれど、何かがカエデの頭の中で引っかかる。
その答えに辿り着くのは、翌日になってからの事だった。
「うん、分かった。じゃあ、また明日ねカエデちゃん」
「うん、また明日」
そう言って別れた。
のに。
その明日に、カエデは壮五に会いに行かなかった。
いや、行けなかったのだ。