夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)未完
運転手は百さんだった。
私がテレビ局に入った時は、ちょうどRe:valeがデビューする頃と重なっていたから。
私はRe:valeさんと共にテレビ局で成長した、とも言える。
でも、そんなのはおこがましいから、思う事もなるべく避けていた。
私は、百さんの突然の声に驚いて、息がつまる。
百さんは、化粧が落ちた私を見て。
ハンカチを渡してくれた。
「とりあえず、これで涙拭きなよ。大丈夫! 何があったか知らないけど、百ちゃんはみんなの味方だよ!」
気持ちはありがたかった。
でも私は、ハンカチを使わないまま返す。
お気持ちだけで十分です。
という気持ちを込めて、首を左右に振った。
「あれ? もしかして、カエデちゃん? なら、どうしよう。ねえダーリン、カエデちゃんが泣いてるんだけど、オレ、どうしてあげたら良いかな?」
そう言って、百さんが隣の助手席を見る。
見れば、そこには千さんが座っていて。
「一緒に連れて行ってあげれば良いじゃない。彼女、どうせ仕事は終わってるんでしょ?」
「そうなの?」
百さんに尋ねられ、私は頷くべきか迷った。
ここで頷けば、私は百さん達と一緒に行動する事になりそうだったから。
しばし迷った後、私は首を再度横に振った。
タレントさんに、あまり迷惑をかけてはならない。
こんな状態でも、私はテレビ局員だ。
テレビ局員は、芸能人に世話になったりしない。
「本当に? そんなにメイクが崩れた状態で? 本当の事を言ってごらん」
本当の事。
千さんにそう言われても、私にはどうすべきなのか分からない。
そもそも、百さんと千さんは、仕事する為にテレビ局まで来たのではないのか?
なぜここで、私に構っていられるのだろう。
私が、泣いていたから・・・・・・?
だとしたら申し訳ない。
手話でも、伝えなければ。
――仕事の邪魔してごめんなさい。
「彼女、何て?」
「なんか、謝ってるのは分かるよ。でも、詳しい事はちょっと、オレにも分からないな。ねえ、分かるように説明してくれる?」
と、言われて。
私は慣れた手つきでスマホを取り出し、文字を打ち込んだ。
そしてそれを百さんに見せる。
「えっと、仕事の邪魔してごめんなさい、だって! いいよいいよ、オレ達今日は休日デートしてるだけだから!」
休日デート?