夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)未完
約束を取り付けたワタシは気分がとても良かった。
香住カエデ。香住カエデ。
素晴らしい名前だ。
素晴らしい女性だ。
彼女の声は聞いた事が無いが。
きっと声も素晴らしいに違いない。
どんな声をしているのだろうか。
鈴の音のような愛らしい声だろうか。
それとも、意外にもハスキーな大人の声をしているのだろうか。
カエデさんの事を考えていると楽しい。
メンバーと居る時のように、とても楽しい。
ワタシは、ここなのテーマ曲を鼻歌で歌いながら。
テレビ局での仕事に勤しんだ。
撮影現場には、カエデさんの姿は無く。
何度もマネージャーに、彼女はどこかと尋ねた。
マネージャーは、カエデさんの居場所をすぐに探してくれた。
そして、簡単な手話を学べる動画も紹介してくれた。
ワタシ達のマネージャーは、本当に優秀な女性だ。
ワタシは手話動画を食い入るように見つめながら。
自分の手を真似して動かした。
こんにちは、ありがとう、大丈夫、ごめんなさい。
ありがとう、とごめんなさい、の手話の動きは、ほとんど違いが無い。
これは、とても興味深い。
日本人にとっては、ごめんなさいもありがとうも、同じような意味として用いられるのだろうか。
テレビ局の仕事が終わった。
カエデさんの姿は、あれから見ていない。
ワタシには、次の仕事がある。
だから、今ここで会えなければ、今日はもうカエデさんに会う機会が無いという事だ。
ワタシは、名残惜しくなりながらも、マネージャーと共に控え室へ向かう。
もうすぐ控え室に着くという時だった。
後ろから足音が聞こえる。
ワタシは、なんとなく気になって振り返ると。
カエデさんがそこに居た。
会いに来てくれたのだろうか。
だったらこの上なく嬉しい。
ワタシはマネージャーに一声かけてから。
振り返り、カエデさんに手話で話しかけた。
「こんにちは」
覚えたての手話だ。
通じると嬉しい。
カエデさんは、手話でこんにちは、と返してくれた。
胸が躍る。
「ワタシとお友達になってくれませんか?」
手話でまた話しかけたが。
カエデさんは、途端に瞳に陰りを見せる。
なぜだろう。