夢に見た世界【アイドリッシュセブン】【D.Gray-man】
第3章 爪先ほどの想い(i7)未完
「手話の彼女、どこかで見ませんでしたか?」
ワタシが探すのは、名前も知らないあの人。
テレビ局という広い場所で人一倍、懸命に、健気に、仕事に打ち込んでいた彼女だ。
最初に、彼女を見た時は驚いた。
マネージャーより少し年上に見えるが、瞳の中に幼さも感じて。
なんて神秘的な女性だろうと、目を奪われた。
女性は皆、美しい。
だが彼女の美しさは、言葉に表すにはどうも物足りなくて。
それだけでは無いと感じた。
彼女は言葉を発しない。
それは何故なのかとマネージャーに尋ねた。
マネージャーは、分からないけれど話せないのだと思う、と答えてくれた。
手話を使っているから、と。
ワタシには分からなかった。
ノースメイアの手話とは、違う動きだったから。
ワタシは、ますます彼女に興味を持った。
話せないのなら、どうやって彼女と対話すれば良いのだろうか。
手話を覚えたいと思ったが。
ワタシの周りに、日本の手話を使える人物が居そうにないと思った。
だから今日は、彼女に会って。
そして友人になってくれるよう頼むつもりだった。
彼女は、ちゃんとワタシの言葉が聴こえる人なのだろうか。
廊下を歩いていたら、遠くに彼女を見つけた。
彼女もワタシを見つけてくれたようで、目が合ったのが分かった。
ワタシは廊下を走った。
早く彼女と話をしたかった。
彼女は、少し驚かせてしまったようで。
柱の影に隠れるように、小さくなった。
それでも、ワタシは足を止めず。
彼女の目の前までようやく辿り着けた。
「ハーイ、麗しいアナタ。お名前をお聞かせ願えませんか?」
話しかけながら、差し出したのは一枚の紙とペン。
そう、ワタシは筆談をしようと決めたのだ。
彼女は、その神秘的な漆黒の瞳を驚きで瞬かせ、紙とペンを受け取ってくれた。
返ってきた紙には「香住カエデ」と書かれていた。
美しい字だった。
「カエデさん。ワタシ、アナタともっと話がしたいです。ちょっと、お時間よろしいですか?」
カエデさんは、申し訳なさそうな顔をして、ワタシから紙を受け取った。
「仕事があるので、すぐには無理なんです。ごめんなさい」
そう書かれた紙を受け取り、ワタシは笑った。
「では、カエデさんのご都合がよろしい時に、また伺いますね!」