第16章 Murderers
パチン…!!
「っは!!」
「タケミチくん!?」
ここは…ナオトの家か…
「っそうだ!伊織さんは…!!」
『…ん、』
「伊織さん!!」
『…』
「っ!」
伊織さんも未来に戻って来たようで、気だるげにソファから身体を起こす
ハラハラと顔に落ちた漆黒の髪を掻き上げると、やはり右の首筋にはドラゴンのタトゥーが覗いて見えた
そしてチラリと自身の左腕を見ると俺たち2人をじっと見つめる
その視線には温度が全くなくて、背筋に氷が当てられたような、ゾクリとした感覚が走る
「…過去で…何かありましたか?」
「ああ、それがさ、」
俺はとりあえずナオトに事情を話した
天竺のこと、稀咲のこと、
わからないことだらけで、情報を求めて帰って来たこと
今のところ千冬と考えた稀咲のタイムリープの仮説
全部話し終えるとナオトは大きくひとつ息を吐いた
伊織さんは微動だにせず最後まで黙って話を聞いていた
と、ナオトが立ち上がって伊織さんの元へと近づいた
そして彼女の足元に膝をついて座ると、瞳を見上げながら問いかける
「伊織さん、思い出したくないことも沢山あるとは思います。
ですが…お願いします。教えてください。
今までの12年間で一体何があったのか。
どうして東卍はこんなに巨悪になってしまったのか。」
『…』
「12年分の記憶を貴女は継承しているだけです。
今の貴女に罪はない。
貴女方をこんな風にしたのは一体誰です?』
『…』
伊織さんはそれでも瞳に光を宿すことはなくて、ぼんやりとナオトを眺めるだけ
その様子が堪らなく虚しくて、気づけば俺もナオトの隣に並んで声を上げていた