第2章 水心子正秀 / 恋刀1年記念の決意 ★
「お帰りなさい水心子。誉100回おめでとうございます。褒美は何が良いですか?」
「我が主よ、その褒美なのだが…、どうしても、お願いしたい事がある」
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「わあぁぁぁぁ、素敵なお部屋ですね♪」
「あぁ、そうだな」
某月某日。
私が誉100回の褒美に、お願いしたこと。
それは今日この日に、主と二人で温泉宿に宿泊したい、といったものだった。
「それにしても驚きました、誉のご褒美に温泉なんて…」
「す…、済まない、かなり贅沢を言ってしまった…。その。今日は主と恋刀になって1年の記念日だから…、その」
「水くん…」
中々照れてしまって主の顔を見れないでいると。
ていっ、と可愛らしい声を発し、中々に重いボディーブローを入れてくる主。
「ぐっ…!? あ、主…っ!??」
「もう。外で二人でいる時は名前で呼んでって、いつも言ってるのに~」
むぅ…、と頬を膨らませる彼女だったが。
「あぁ…そうだったな、ごめん、」
名前を呼ぶと、ぱぁっと笑顔になる。
そういうところが可愛くて。
私もつられて、顔が綻んだ。
そして彼女は、持って来た荷物を整理するね、と言って鞄やらなんやらと真剣に睨めっこに入る。
あまり凝視するのも失礼なので、私は窓際に移動し備え付けの椅子に腰掛けた。
そもそも。どうして誉の褒美にこれを選んだかというと。
それは誉を取る数日前に遡る。
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「ねぇ水心子。もうすぐ主と恋刀になって1年だよね。どう? 調子は」
同室の清磨と、ふとそんな話になった時だった。
清磨にはこれまでも色々と相談に乗って貰っていたし、我々の関係について、特に隠し立てする事はなかった。
…というか。清磨には何故かすぐにバレてしまうのだ。
「調子…といわれると返答に困るが…。順調だと思うぞ。」
「そっか。それで? 主とは何処までいったの?」
「何処までって…、直球過ぎないか?」
「いいじゃない。親友の恋路だし、気になるんだもの」