第9章 ハロウィーン
「--そうだね、嫌いだったよ、君のこと」
ミラは初めてハーマイオニーと出会った日のことを思い出しながら言った。
「ノックもなしにコンパートメントのドアを開けるし、偉そうな態度も好きになれなかった…おまけに勉強もすごくできる。でも---初めての飛行訓練でわたしがドラコに杖を向けた時、止めようとしてくれたのはハーマイオニーだけだった…その時わかったんだ、あなたがちゃんと人のことを考えられる人なんだって」
自傷気味にミラは言うと、扉の向こうにいるハーマイオニーにがきっと耳を傾けてくれているに違いないと思った。
「今日の呪文学だってあなたは丁寧に教えてくれた---わたしじゃ絶対にできない--ほら、わたし性格よくないし。それにもうハーマイオニーのこと、嫌いじゃないんだ……それでもよかったらなんだけど」
ゴクリとミラは唾を飲み込んだ。
「友達になってほしいんだ」
やっと言いたいことを言い終えると、ミラは少し緊張していた肩の力を抜いた。トイレの中は異常に静かで、もうハーマイオニーの鼻を啜る音も聞こえなかった。
少しして、閉じられていた扉がゆっくりと開いた。目を真っ赤にしたハーマイオニーの姿があり、ミラは苦笑いした。
「その顔じゃ大広間に行けないな」
「もう少しオブラートに包んで言えないのかしら?」
「だからハリーに談話室に食事を持ってきてくれるように頼んどいた、ちゃんと気は使ってる」
「……あなたって、分かり難いわ」
「そりゃ、どうも」
クスクスとハーマイオニーは笑った。さっきまで真面目に話していたミラは、自分から目を逸らして言うので、ハーマイオニーはそれが彼女の照れ隠しだと察した。
「---なんだ、この匂い?」
汚れた靴下と、掃除をしたことがない公衆トイレのような匂いが混じった悪臭が鼻をつき、ミラとハーマイオニーと顔を合わせた。ハーマイオニーもわからないと言った顔でこっちを見ていた。
次に低い唸り声と、巨大な何かを引きずる音が段々と大きくなり、ハーマイオニーの顔は青ざめて震えていた。ミラはポケットから杖を取り出して、冷たい指先に力を込め、強く握りしめた。ハーマイオニーを自分の後ろに隠すと、杖を自分が入ってきた方向へ向けた。