第9章 ハロウィーン
「あれって…ネズミ?」
「ただのネズミじゃないぜ、ミラ」
「安心しろ!本物のネズミじゃないけど、本物に見えるようにしてある」
「いいぞ、食べるんだ!」
フレッドとジョージの様子に、ミラもだんだんワクワクし始めた。あのネズミを食べたミセスがどうなってしまうのか、早く食べてくれと強く願った。
怪しげにネズミを見るミセス・ノリスは、ネズミを猫パンチしてみたり、匂いを嗅いだりしていた。相当用心深い猫だと思ったが、興味がないわけでもない様子だった。
我慢強く三人はそれを見守っていると、ついにミセス・ノリスそれを口にした。大きくないそのネズミを一飲みにすると、フレッドとジョージは「やったぞ!」と小さな声で歓喜した。
「ここからがショータイムだ!」
「瞬きしちゃだめだ」
「あと5秒…3」
「2」
「1!!」
二人の声が重なって直後、ブクっとミセス・ノリスの胴体が膨れ出した。ミラはジョージが行った通り、瞬きはしなかった、いや、することを忘れたように、風船のようにまんまるに膨れていくミセス・ノリスに目が離せなかった。
ミセス・ノリスがパンパンに膨らんだ風船の様になり、足が地面を離れ出すと、あのすらりとした足も膨れた体に少し埋もれて短く見えるその様が面白く、ミラは思わず口に手を当てて、込み上げてくる笑いを抑え込んだ。
自分の体に異変が起こったミセス・ノリスは、怒りの鳴き声を漏らした。まるでフィルチを呼んでいるのかと思わせる鳴き声に、ドタバタした足音がミセス・ノリスの向こう側から聞こえてきた。
「誰だ!ミセス・ノリスにこんなことをする奴は!!そうだ、あの双子だ!あいつらしかいない!!どこだ!双子ども!!!」
膨らんでふわふわと飛んでいくミセス・ノリスを捕まえようと、フィルチはその場でジャンプをするが、すでに手の届かないところまで上に上がってしまったミセス・ノリスの悲しげな鳴き声が聞こえた。
「よし、ミラ逃げるぞ!」
「フィルチのやつ、すぐにこっちに来るぞ!」
ミラはフレッドとジョージに片方の手ずつ、手を取られて走り出した。