第2章 宛名のない手紙
ミラは生まれて初めての自分の手紙に驚きを隠せなかった。この10年誰一人として手紙をくれた者はおらず、どこかに親戚はいないのか、この大嫌いな孤児院を何回飛び出したいと思ったことか。しかしミラには行く当てもなく、ただただ黙っていうことを聞くしかないと、自分の運命を呪っていた。
ミラはおずおずと差し出された手紙に手を伸ばそうとすると、隣からものすごい勢いで手紙を引ったくるミス・メアリーがいた。ミス・メアリーは手紙の隅から隅まで見ると、まるであり得ないといった顔をしていた。
そして一つ咳払いをした。
「コホン、ミス・マクゴナガル…お恥ずかしながら、とてもこの子を通わせるお金はこの院にはなく…申し訳ないのですが、このお手紙は受け取れません」
そういうと、ミス・メアリーは手紙をマクゴナガルに突き返した。ミラは眉間に皺を寄せ、口を開こうとしたがやめておいた。自分が何か発言すれば、ミス・メアリーにあとでこっぴどく嫌味と掃除を増やされるからだ。
マクゴナガルは手紙を受け取ると、また手紙をミラの方に向けた。
「あの!ミス・マクゴナガル!私先ほど断ったばかりですが!」
ミス・メアリーは少し怒り気味に言った。
しかしマクゴナガルという女性は気にすることなく、真っ直ぐにミラを見ていた。
「この手紙はミス・グローヴァーのものです。貴方が決めることではありません」
と、ピシャリと言った。
「それにホグワーツではお金は必要ありません。確かに揃えていただきたい物はございますが、それはこちらから出しましょう。ミス・グローヴァーはなんの心配もなく、学校生活を送れるでしょう。そちらの負担になることは一切ありません」
そう言い切ったマクゴナガルに、ミス・メアリーは顔を真っ赤にして膝に乗せた拳を握りしめていた。ミラは自分を優しく見つめるマクゴナガルに、少し居心地の悪さを感じつつも、手紙を受け取った。
黄身がかった手紙にはエメラルドグリーンの色で住所と名前が書かれていた。自分の名前に「ミス・ミラ・グローヴァーと書かれているのを見て、くすぐったい気持ちになった。