第9章 ハロウィーン
次の授業の移動時間に、ハリーたちが上機嫌で歩いている姿を、ドラコは自分の目を疑うように見ていた。それもそうだろう、ハリーがすでに退学だろうと思っていたが、ハリー、ミラ、ロンがケロりとした顔でいるのだから、不思議に思ってもしょうがない。
そして今日は金曜日、最後の授業を受けるために、気が進まない魔法薬学の時だった。本日の魔法薬は《眠りの水薬》と、スネイプ先生の話をそこそにに聞き、誰と組もうかと考えていた時だった。
「来い、グローヴァー」
「え?」
たまにはハリーと組むのもいいかもしれない、そう思っていた時、思いもよらない人物に声をかけられて、ミラはまじまじとその人物を見た。まかさ声をかけられるとは思ってもいなかったからだ。
ムスッとはしているが、自分を誘ってきたのはドラコだった。すぐさま隣で座っていたハリーが立ち上がり、ドラコに食いかかった。
「ミラは今日、僕と組むから君は他を当たれよ」
「お前はいつもウィーズリーと組んでるだろ」
「今日は違うんだ」
「僕にウィーズリーと組めっていうのかい、君は?」
「僕だって嫌さ」と、ロンが嫌そうにボソッと言ったのが聞こえたが、二人には全く聞こえていなかった。
ハリーとドラコが静かに睨んでいると、その様子をめざとく見つけたスネイプ先生がやってきた。
「何事かね、諸君。他はすでに材料を取りに行っているというのに、おしゃべりとは呑気なものですな」
スネイプ先生の登場に、ハリーは眉間に皺を寄せ、逆にドラコはふふんと、勝ち誇った顔をした。
「スネイプ先生、僕はいつもグローヴァーと組んでいるので、声をかけただけなんです。それなのにポッターがダメだって言って聞かないんです」
「ポッター、他の組みに迷惑をかけた罰で二点減点。早くウィーズリーと始めたまえ」
「でも、先生!」
「ハリー!また今度組めばいいじゃないか、今日はロンとね」
ミラはサッと席を立つと、荷物を持ってドラコと別のテーブルに向かった。後ろを振り返ったミラが、口パクで「ごめん」と言っているのを見送ると、ハリーは大きなため息をついた。
「…そんなに僕と組むの嫌かな?」
「違う、そうじゃないよ…」
すでに違うところを歩いているスネイプ先生を、ハリーは忌々しく睨みつけたのだった。