第8章 真夜中の決闘
【ドラコ視点②】
「これで満足?自分はさっさと逃げといてさ」
ポッターがマクゴナガルに連れて行かれて笑っていると、アイツはこの僕に杖を突きつけてきた。冷たいアメジストの瞳が、本気で僕に呪いをかけようと睨んでいた。
あの時は汚れた血のグレンジャーがアイツ言いくるめて、呪いをかけられずに済んだが、スネイプ先生が言った通りだ。こいつは危険だと思った。
更にポッターを嵌めてやろうと決闘を挑んだが、またしてもグローヴァーは僕に杖を向けてきた。それも横腹だ。他の誰にも悟られないよう、ご丁寧にローブに隠しながらだ。とてもグリフィンドールの生徒とは思えない。
今夜の決闘も、行くつもりはなかった。なのにアイツは僕を臆病者呼ばわりすると言ったせいで、考えていた計画を練り直すことになった。決闘はせず、フィルチに捕まった様子を知っていればいいかと隠れていたが、なぜかアイツに見つかったせいで、僕がフィルチに捕まりそうになるところだった。
もうダメだ…僕はそう思った。走り去っていくアイツらの背中を見ていると、グローヴァーだけが振り返って戻ってきた。
「目をつぶれ!早く!」
杖をフィルチが来る方向に向け、訳が分からないまま目を瞑った。「ルーモス!」と、聞こえた瞬間、一瞬強い光を感じた。途端にフィルチの叫び声と罵声が聞こえて目を開ければ、腕を掴まれて僕達は走り出した。
どこかの空き教室に逃げ隠れて、ぼくはやっと冷静になれた。どうしてわざわざ自分を助けたのか---、一歩間違えれば自分もフィルチに捕まっていたかもしれないのに…。
グローヴァーに何故あそこにいたのかを聞かれた時、咄嗟にピーブスの名前を出した。これで僕が決闘に行こうとしたが、やもえず行けなかった説明がつく。中々いい案だと思ったが、アイツが疑った目で見てくるから、強く睨みつけた。
そしてこの話題から話を逸らしたかったついでに、ポッターとの関係をわざと悪く聞けば、案の定グローヴァーは僕にまた杖を向けてきた。そう来ると思って、ぼくも杖をグローヴァーに向けた。
「ハリーは…大切な親友で……そして家族だ----最初から親も、金もあるアンタには、わからないよ…私たちの気持ちなんて」
話は終わりだ、と言うように、グローヴァーは僕に背を向けて教室から出て行った。