第8章 真夜中の決闘
【ドラコ視点】
初めてグローヴァーを見た時、すぐに家庭の貧しいところだとわかった。髪は纏めてあったがボサボサだったし、服も色褪せたつぎはぎだらけで、とてもじゃないがぼくの父上や母上が見たら、きっと話しかけるのも許してくれなかっただろう。親がいない事もポッターの話を聞いて、多分こいつもいないんだろうと確信していた。
しっかりとグローヴァーを見たのは、握手をした時だ。アメジストのような瞳の色は、今まで見たことがなかった。不揃いな前髪のせいでよくは見れなかったが。
アイツはポッターとは違って話も分かる奴だと思った。散々この僕がスリザリンに誘ったというのに、結局グリフィンドールに行った。
マダム・マルキンの店でポッターとは初対面だと言ったが、汽車の中でも、学校内でもアイツはいつもポッターといる所をよく見かける。今思えばあれは全て嘘だったのかもしれない。
それなのにアイツは全くグリフィドールに行った事を忘れたかのように、魔法薬学では軽々しく僕と組もうと言い出した。小舟に一緒に乗った時もそうだが、こいつは何を考えているかさっぱりわからない。
ポッターやウィーズリーのように、敵意を剥き出しにもしない。だから様子を見るために魔法薬学のペアになり続けてきたが、手際が他の誰よりもいいことしかわからなかった。
「ミスター・マルフォイ」
魔法薬学の最初の授業を終えて、スネイプ先生が僕を呼んだ。クラッブとゴイルには先に行くよう言いつけた。教室に二人っきりになると、先生は言った。
「あのミス・グローヴァーだが…ああいう人間は腹の中で何を考えているかわからない。くれぐれも気を付けるように」
「はい、先生」
スネイプ先生にも言われるくらいだ、僕はますますグローヴァーを警戒した。それでも会話も当たり障りもなく、僕が褒められれば「やるじゃん」と馴れ馴れしいが、そう言われて悪くないと思っていた。
しかし飛行訓練の初日、アイツが初めて僕に口出しをしてきた。
ポッターはあのバカ玉をキャッチするし、今まで箒に乗ったことがないと言ったグローヴァーは、アイツのところまで初心者とは思えないスピードで飛んでいった。コツを教えてほしいと言ったくせに、あれも嘘だったのか、それとも才能があったのか…どちらにしろ、僕を不愉快にさせるには十分だった。