第8章 真夜中の決闘
呪文を唱えると薄暗かった廊下は一瞬眩しく光り、ミラも光が強くなる前には目を閉じていた。そしてフィルチの何かを叫ぶ声が聞こえた。杖を下ろして光りを無くすと、目を抑えて暴言を吐くフィルチの姿が目の前にあった。
「許さんぞ!どこの誰かわからんが!絶対に!絶対に捕まえてやる!!」
ミラは床に座り込んでいるドラコの腕を慌てて掴むと、「早く!」と、声に出さず、口の動きだけで伝えた。ドラコがしっかり立つのを見ないまま、ミラは駆け出した。もうハリー達がどこに行ったかもわからない、ただ全速力で廊下を駆け抜け、今がどこなのか、どこを走っているのかもわからないまま、目に入った空き教室の扉に手をかけて中に入った。
扉を閉め、どこか隠れられそうな場所はないか、息を弾ませながら薄暗い教室の中を見回した。
「おい、離せ!」
ミラはハッとして、掴んでいた腕を離した。無意識に強く掴んでいらからか、それとも無用だという意味でなのかはわからないが、ドラコも息を弾ませながらも、嫌そうな顔をしていた。
「せめてありがとうくらい言ってほしいね」
冷たく言い切ると、ミラは入ってきた扉に耳を当てて、聞き耳を立てた。音は驚くほど静かで、フィルチが追いかけてきた様子はないようだった。
扉から身を離すと、後ろにいるドラコを見た。
「それで…なんであんなところにいたのかな、臆病者のドラコ”坊ちゃん”」
「その呼び方はやめろ!僕は行くつもりだったさ、途中でピーブスを見かけてね、だからあそこで隠れていたんだ」
「ピーブスねぇ…」
訝しげにドラコを見たが、強くこっちを睨みつけていた。
「そもそもお前はポッターのなんだ?なんでそこまでアイツに関わる、アイツが選ばれし者だからか?」
「違う!」
カッとなり、ミラは杖をドラコに向けたが、流石のドラコももう遅れはしなかった。すでに2回も杖を突きつけられれば、警戒されるのは当たり前で、ドラコも杖をミラに向けた。
「ハリーは…大切な親友で……そして家族だ」
ギュッと、ミラは杖を強く握りしめた。
「最初から親も、金もあるアンタには、わからないよ…わたし達の気持ちなんて」
ミラは吐き捨てるように言った。