第8章 真夜中の決闘
ハリーが手招きするのが見え、みんなはハリーの後に続いた。ミラはハーマイオニーを先に行かせ、次にロン、そしてネビルの後に続いた。五人は音を立てず、管理人のフィルチの声とは反対側の扉へと急いだ。
「どこかこの辺に居るぞ…隠れているに違いない」
と、フィルチのつぶやく声がした。その声はそれほど遠くなく、徐々に自分たちに近付いて来るのがわかった。鎧がたくさん飾られている長い回廊を、五人は石のようにこわばって這うようにして進むには、やはり無理があるとわかると、ミラもハリーと同じく杖を取り出した。
「っ…う、うわああああああ!!!」
突然、前にいたネビルが恐怖のあまり悲鳴をあげて、やみくもに走り出した。そのままつまずいてロンの腰に抱き付いたせいで、二人揃ってまともに鎧にぶつかって倒れ込む姿を見たミラは、血の気が一瞬にして引いた。
「逃げろ!」
ハリーの声がした。ミラは弾かれるように、倒れ込んだ二人の服を後ろへ力一杯引っ張って立ち上がらせた。
「走れ!早く!」
ミラはネビルの背中を押して走り出した。ハリーの後に続いて走っているハーマイオニー、そしてロンの背中を頼りに前を走り続けた。後ろを振り返ることはできなかったが、ミラは一瞬キラリとドアの隙間から光った扉に向かって杖を振った。
どこかの教室の扉は勢いよく前に開き、「うわっ!」と、何かが廊下に転がり出てきた。なんだろうと振り返ると、ミラは目を大きく見開いた。
雲の隙間から時々入る月の光が、その転がってきたものを映すと、薄いグレーの、驚きと、恐怖の混じった瞳と目が合った。
「っ…バカ!」
ギュッと目を一瞬瞑り、前を必死に走るネビルたちからグルっと無理やり逆方向に向かって走り出した。きっと管理人のフィルチに告げ口をして、嘲笑いに来た人物なはずなのに、助ける価値もない嫌な人間だとわかっているのに、放っては置けなかった。
「目をつぶれ!早くっ!」
「!」
もうこれしかないと、ミラは思った。すでにフィルチの走って来る音と、息遣いが聞こえ、もう助け起こして走るには時間がないとミラは直感した。杖をこっちに向かって走ってくる管理人のフィルチに向け、喉が緊張で引き攣りそうだった。
「ルーモス!!」