第8章 真夜中の決闘
「行こう」
ロンはハーマイオニーに目も暮れず言った。ハリーは、『太った婦人の肖像画』を押し開け、その穴を乗り越えて、廊下に出た。続いてミラ、ロンが出てくると、ハーマイオニーも諦めずにガーガーと怒ったアヒルの様に怒鳴り続けて付いてきた。
「グリフィンドールがどうなるか気にならないの?自分のことばっかり考えて、スリザリンが寮杯を取るなんてわたしは嫌よ。わたしが呪文を知ってたお陰でマクゴナガル先生がくださった点数を、あなたたちがすべて台無しにするんだわ!」
「うるさいなぁ、あっちいけよ」
諦めの悪いハーマイオニーは、尚も怒り続けたが、もう誰も彼女の言うことを聞こうとしなかった。目も合わせなくなると、ハーマイオニーはやっと静かになり、もと来たところへ戻ろうと後ろへ振り返ると、肖像画の『太った婦人』がいなくなっていた。
どうやら夜のおでかに出かけてしまったようで、ハーマイオニーは寮に戻ることができなくなった。
決闘に遅れるといけないと三人はトロフィー室に向かうと、なんとハーマイオニーも付いてきた。そしてさらに歩き進むと、床で丸くなって眠っているネビルを発見し、三人が四人、そして五人の大所帯になって、トロフィー室に向かった。
ロンはハーマイオニーとネビルが着いて来ることにカンカンだった。楽しみにしていた決闘が、うまく行かなかったらと思うと、どうしても許せないようだった。それでもハリー達五人は神経質になりながらも、四階のトロフィー室までフィルチに会うことなく着くことができた。
ドラコとクラッブはまだ来ていなかった。
ハリーの手には杖が握られていた。ドラコがいつ不意打ちを仕掛けてくるかもしれないと思い、部屋の両端の扉を睨みつけていた。しかし数分経っても、ドラコとクラッブの来る気配はなかった。
来るはずがない、こんな危険なことをしてまで、わざわざ決闘をしにくるような男じゃない、どうやら本当に臆病者のようだ。ミラはみんなにバレないようにため息をついた。
その時、隣りの部屋で物音がして、五人はハッとした。
ハリーが杖を振り上げようとした時、誰かの声が聞こえた。
「いい子だ、しっかり嗅ぐんだぞ。隅の方に潜んでいるかもしれないからな」
管理人のフィルチが猫のミセス・ノリスに話し掛けている声が聞こえ、五人は心臓が凍りついた。